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ジャパンハンドラーズさんより 書評『日本国の正体:政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社) つづき

(つづきです)


 関岡英之氏によると、年次改革要望書は、一九九四年から毎年、アメリカ政府から要求文書として提示される。アメリカ側のカウンターパートになっているのが、米通商代表部(USTR)であり、毎年、英文の要望書の全文はまず最初にこのUSTRの部署で公開される。

 重要なのは、この文書が、外務省経済局、経済産業省を窓口にしていることである。受け取るのは政治家の代表である総理大臣ではなく、官僚組織であるという点だ。要するに、これはアメリカのUSTRから、日本の官僚機構への要求文書なのである。

 アメリカの規制緩和要求と連動した「官僚バッシング」によって、日本の東大法学部出身の官僚たちには、「本当に影響力があるのは日本の派閥政治家ではなく、アメリカ財界なのだ」であるという“学習”がなされていた。

官僚組織は自らの省の存立を目的に活動している、というのが合理的選択論の想定だが、そうなると、官僚達は次の行動パターンを取るようになる。

「プリンシパル(アメリカ財界)の要求を受け入れつつ、エージェントである自分たち官僚はその権限の温存を図る」

 アメリカにとって、日本政府に実現してもらいたい政策要求は、郵政民営化やNTTの分割、外国人弁護士法の制定、混合診療の解禁などであったが、これらの全ては政策要求文書である、「年次改革要望書」に記載してある。

 ところが、世界覇権国であるアメリカにとって、日本というのは、数ある周辺国の中の一つにすぎない。したがって、覇権国は、属国のすべての行動を監視する事は出来ない。
 一定の「アジェンダ」(重要な政策課題)さえ、忠実に実行してもらえれば、他は現地の行政官僚の自由にしてもよい、という考えになる。ここで官僚とアメリカの間に妥協が成立する。

 ここできわめて大きな問題が生じる。それは、「そもそもアメリカは、日本の官僚機構の監視についてはまったく関心がない」ということだ。

 アメリカにとっての合理的選択は、アメリカ財界の利益の極大化であって、日本国民の利益の極大化ではない。しかも、監視しようしもアメリカと日本は太平洋を挟んでおり、出来ることと言えば、せいぜい、訪米した官僚の行動の監視、現地大使館の駐在員を使った監視である。つまり、プリンシパルであるアメリカは、日本の現地情報についての非対称性の度合いが、日本の政治家たちよりも大きいことになる。

 官僚達は情報の非対称性を利用して、重要だと仰せつかった「郵政民営化」などのアジェンダ以外の問題については、比較的フリーハンドで臨める。財政危機をあおり、増税世論を扇動する財務官僚の行動は、実際はアメリカ国内の経済学者たちからは、笑いものになっているのだが、アメリカにとって、日本国内の財政問題は関心がない。
 アメリカは郵政資金で米国債を買い支えてもらえばそれで十分だからだ。(日本の財政危機のウソについては、菊池英博の新刊『消費税は0%にできる』ダイヤモンド社に詳しい)

 したがって、合理的選択論の観点で考えると、アメリカ財界が事実上の「プリンシパル」となって、日本の政治家、官僚、マスコミをエージェントとしているので、官僚はかつて以上に「エージェンシー・スラック」を利用できることになり、大きな自由裁量権を得てしまうという結果になる。

 一般的な政治学の用語で言い換えると、政治家、官僚、利益団体、マスコミといったアクターの中で、政治家、官僚、マスコミといったアクターは、全て、利益団体(海外の利益団体やそれと結託するグローバリストの財界)にコントロールされてしまっているということになる。

 民主党政権の課題は、このゆがんだ関係を、本来あるべき、「国民の代表である政治家(プリンシパル)-政治家の代理人である官僚」の関係を築き直し、出来るだけ官僚の自由裁量権を狭めることで、官僚の行動と国民の行動の利益の間の相反関係が生まれにくくすることである。

 それをゆがめている、利益団体、それも外国の利益団体であるアメリカ財界に対しては、厳しく規制を行うべきである。例えば、竹中平蔵のように、有力者が政治決定に影響を与えるべく、国外のアクターの利益を代弁する行為を規制するべきである。これは具体的には「ロビーイング規制法」や、外資企業の重要産業への投資を制限する、アメリカの「エクソン・フロリオ条項」の日本版を制定することで実行可能となる。

竹中平蔵は「アメリカのロビイスト」である

 次の選挙(注:本稿執筆は09年衆院選前)は、日本がアメリカとの対等な関係を築くと同時に、日本の優秀な官僚組織をを大きな国家戦略の元で機能させるという重要な目的を実現するための重要なチャンスである。アメリカの対日要求を抑えさせることは出来ないが、それに賢く対抗することは可能だ。そのためには官僚制度の改革が不可欠なのである。
 合理的選択論は、もともとはラムザイヤーなどのアメリカのグローバリスト達が世界支配のために重んじたという面があるが、これを逆用することで日本の国家戦略家たちは大きな反撃に出ることが可能なのである。

(おわり)


きっちょむ
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