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司法を動かし始めたマスコミ

少し前の記事になりますが、橋下弁護士が光市母子殺害事件の弁護団に対し、テレビ番組で懲戒請求を扇動し、延べ4000件近い請求が殺到したという。
橋下弁護士に対する訴訟にまで発展しているが、この騒動にはマスコミの問題が大きく関わっているようだ。

「江川紹子ジャーナル」より引用

 その番組を見てみたら、このコーナーは最初から最後まで弁護団への罵倒で埋め尽くされていた。「品性下劣」「三百代言」など、出演者が競うようにして刺激的で口汚い言葉を口にする。この弁護団バッシングの先頭に立っているのが橋下弁護士だった。まさに口角泡を飛ばす勢いで、彼はまくしたてた。
「(被告人の今の主張は)21人というか、安田という弁護士が中心になって組み立てたとしか考えられない」
「全国の人ね、あの弁護団に対して、もし許せないとい思うんだったら、一斉に弁護士会に対して懲戒請求を立ててもらいたい。懲戒請求っていうのは誰でも彼でも簡単に請求を立てられますんで、何万、何十万という形で、あの21人の弁護士の懲戒請求を立ててもらいたい。(弁護士会は)2件3件(の懲戒請求が)来たって大あわてになる。1万、2万とか10万人くらい、この番組を見ている人が一斉に弁護士会に行って懲戒請求をかけてくださったら、弁護士会の方としても、処分を出さないわけにはいかない」

 弁護士がワイドショーやバラエティ番組に出演するのは、法律的な説明や理性的な解説を加えて、話が感情だけに流れないようにすることに意味があると思っていたが、橋下氏はまったく逆。人々の怒りの感情をあおり、番組を盛り上げる役割に徹していた。弁護士というより、まるで大衆受けを狙う人気取りのタレントである。
<中略>
 しかし、被告人がどんな冷酷で狡猾な人間であっても、その利益のために最大限の努力をするのが弁護人の仕事だ。被告人がひどい男だからといって、その職責を果たしている弁護人に懲罰を加えて、弁護士としての活動をできないようにしてしまえとテレビで煽るのは、やりすぎだ。ましてや、刑事手続きにおける弁護人の役割をよく知っているはずの弁護士が、先頭に立って視聴者をけしかけているのには、かなり唖然とした。
<引用ここまで>


事件の報道では冷酷無比で無反省な犯人像が描かれており、差し戻し審での被告の荒唐無稽な発言を弁護団があたかもでっち上げたかのようにネット上では流布されているが、これはあまりに一面的のようだ。そして橋下弁護士も裁判記録も読まず、断片的報道を元に類推をしているに過ぎないのではないか。

しかし、差し戻し審から弁護団に加わった今枝弁護士によるとどうやら真相は異なるようだ。

「津久井進の弁護士ノート」から引用。

 現在の被告人の発言は、弁護人が指示したり教唆したものではありません。被告人は旧1・2審では、訴訟記録の差し入れもしてもらっていなかったので、記憶喚起も曖昧であり、検察官の主張に違和感を唱えても弁護人に「下手に争って死刑のリスクを高めるより、反省の情を示し無期懲役を確実にする方が得策」と示唆を受けたと述べます。最高裁段階で証拠の差し入れを受け、記憶が整理され、今の主張に至っています。
<引用ここまで>

今枝弁護士自身も事件に関わるまでは、マスコミ報道をある程度信用していたようだ。
<再び引用>
 その後、被告人と接見し、記録を読み込んでいるうちに、本件については看過できない事実誤認が生じており、これをそのまま維持されて量刑も死刑に変わるということになると、もはや刑事司法における正義には絶望せざるを得ないとも言える状況にあることが理解でき、証拠を吟味し、被告人の言い分に耳を傾け、その内容の合理性を考えながら、今のような訴訟活動をなすに至りました。

 確かに、その文章における表現方法において、マスコミに揚げ足をとられるようなデフォルメ的な表現があったことは、より慎重に検討すればよかったと今となっては反省する面もあります。根幹の主張に力が入っていましたが、枝葉をここまで拡張されて報道されることを予想すれば、枝葉のディテールをもっと慎重に描写すればよかったという反省です。
<中略>
 弁護団の主張の内容を検討して、なお「おかしい。納得がいかない。」と批判されるのであれば、我々も自己批判の検討材料とすることができますが、現在までの報道のほとんどは、枝葉だけを取り上げて根幹は紹介せず、「枝葉が腐っているから木ごと切り倒せ」というようなものと認識しています。

 私も、もし、外部から今の報道だけを見て判断したら、こういう荒唐無稽な主張をすることは被告人のためにならないばかりではなく、裁判制度を侮辱しているのではないかと感じるかもしれません。しかし、報道のされかた自体の問題が介入していることを理解していただき、主張を全体として評価して頂ければ、その中での枝葉の位置づけ(なぜそういう枝葉がそこにあるか)がより理解されるのではないかと思います
<引用ここまで>

辻一洋
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