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出版界の特権意識

偉い人ほどすぐ逃げる 武田砂鉄著 文芸春秋 より引用
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 出版という世界は、どこかに特権意識が残っている。オレたちは違う、と思っている。何がどう違うのかはよく分からないし、分かりたくもないのだが、あっ、違わないですよ、との声をいい加減聞き取らなければならないと思う。福田を糾弾して渡部を放任する姿に呆れたところで目に入った ニュースに、もう一発得然とさせられる。

 七月一三日に開かれた自民党の「全国の書店経営者を支える議員連盟」(会長·河村建夫元官房長官)の会合で、出席した書店経営者から「インターネット書店課税」創設の要望が上がった。 自分たちは店舗で固定資産税を払っているので、インターネットで書籍販売をする業者への課税を要求、ポイント還元による値引きの規制を求めたという。あまりにも愚策ではないか。大手書店チェーンの多くはネットでの販売網を持つ。その取り組みがネット書店になかなか追従できないと判断しつつ、ネットで本を売る会社に課税してください、と言い始めたように見えてしまう。

 日頃、なるべくネット書店で購入せず、リアル書店(何度聞いても奇妙な呼称だ)で購入するようにしているし、ネット書店への悪ロなどいくらでも並べられる。しかし、自分たちの窮状を ネット書店への課税で解消しようとし、しかもそれを、自らの発言をいくらでも捏造し、都合 良く忘れたり思い出したりしている、言葉への鈍感さで知られる政党に嘆願することへの危機意識の低さったらない。

 多くの書店員と親しくさせてもらっているが、書店経営者の声と彼らの声が異なることは体感的に分かる。体感的という言い方があやふやならば、信頼する書店のひとつである、青山ブックセンター本店のイート「本屋の経営が苦しくなる一因は、こちいう考え方をする経営 者がいること。いち本屋の人間として、恥ずかしい…。(山下)」を紹介すればいいだろうか。

 本が売れない。売れない時に、なんでだろうね、みんなバカになっちゃったよねと、外のせいにするだけの人たちがこの業界にはたくさんいる。その言い分を投げれば、その日の飲み会は盛り上がるだろうが、その盛り上がりは死期を早める。未だに、オレたちのせいじゃない、と言うのが好きだ。どうにかしてその言い分を続けようとする。

 この議連では、「来年の消費税増税に際し、書籍雑誌への軽減税率適用を求める声も出た」 (共同通信)という。日本書籍出版協会は、本と雑誌に軽減税率の適用を求めてきたが、二〇一五年に作成された広告では、他国では出版物に軽減税率が適用されているとの事例を並べ、出版販売金額が落ち込んだ「原因ははっきりしています。昨年4月に5%から8%に引き上げられた消費税の影響です。(中略)私たちは大いに危倶しています。子どもたちが全国どこでも等しく本に触れられる環境が破壊されることを!」と高らかに宣言されている。本が売れないのは、消費税のせいだというのである。違うと思う。えっと、じゃあ、ネット書店のせいだ。違うと思う。

 自民党の議員連盟に軽減税率適用をお願いしにいくとはどういうことか。軽減税率の適用・不適用は利権が絡みやすい。さじ加減を彼らに委ねることになる。陳情でどうにかしようとする、その心意気に乗れない。出版文化に軽減税率適用を求める有識者会議が出した提言には食が『身体の糧』であるのと同様に、書籍・雑誌等の出版物は『心の糧』であり、生きていく上で欠かせない必需品です」とある。そう思う。そう思うけれど、それを理由に、軽減税率よろしくお願いします、と頭を下げるのはおかしい。結果的に、書籍・雑誌への軽減税率の適用は見送られたが、これから増税のたびに問われることに なる。なんかこう、セクハラも軽減税率も、まだ出版界は特別と思っている節がある。特権意識を更新している場合か、と思う。


以上、引用終わり

(大嶋洋一)
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