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有機農業100万haは実現するか

リンクhttp://www.ruralnet.or.jp/syutyo/2021/202107.htmより

「有機農業100万ha」で地域を元気に、賑やかに

中略

 去る5月12日、農林水産省は「みどりの食料システム戦略」という、日本の農業30年先を見据えた長期的なビジョン(以下「戦略」とする)を正式決定した。農業による環境負荷の低減と生産基盤の強化をめざして示された「2050年までに目指す姿」は、「農林水産業の二酸化炭素排出実質ゼロ」に始まり、有機農業を全農地の25%(100万ha)に拡大、化学農薬の使用量半減、化学肥料の使用量3割減などを掲げた。

 この「戦略」の背景には気候変動対応やSDGs(国連・持続可能な開発目標)などの国際的潮流の急速な強まりがある。欧州連合(EU)は昨年5月、「農場から食卓まで」(Farm to fork)を発表、30年までに①有機農業を全農地の25%まで拡大(17年時点で7%)、化学肥料使用量を半減するとした。

 そんな国際的潮流を受けて農水省はかなり大胆ともいえる「戦略」を打ち出したわけだが、これへの反響は大きく、パブリックコメント(意見募集)は期間が短かったにもかかわらず1万7000件を超えた。大半は「戦略」が育種の手段として掲げたゲノム編集への危惧や反対意見だったが、有機農業にかかわる意見も多く、支援の強化やEU並みに2030年を目標にするべきなど、有機農業の拡大を求める意見が圧倒的だった。

 17年の日本の有機農業面積(有機JAS認証を取得していない有機農業を含む)は2万3500haで、全耕地面積の0.5%。50年に100万haにするには毎年、現状の面積を上回る3万haの拡大が必要になる。そんなことができるのか、花火を打ち上げただけで終わるのではないか、という疑問は当然だが、しかしここは「有機農業100万ha」を素直に受け止め、その実現の道を考えてみたい。

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有機農業も「普通の農業」

 有機農業はこれまで、意識的な農家と消費者との直接的な結びつきによって継続される面が強かった。しかし、これだけでは「100万ha」は難しい。点から面への広がりが必要だ。

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 ここでは「有機農業を核とした環境保全型農業」という表現をしている。その背景には「有機JAS法」という国が有機農業を「規制」「管理」することへの反発があった。有機JAS制度による厳しい表示規制の下では有機農業の拡大は難しい。だから推進法は「認証制度」には触れず、「農業者が容易にこれ(有機農業)に従事することができるようにすることを旨」とすることを、基本理念に掲げたのである。

 有機農業に限らず、農家には自然や作物に働きかけ働き返されるという農耕の本質が息づいている。有機稲作の確立に尽力し、昨年12月に急逝された稲葉光圀さん(民間稲作研究所代表)は、「有機農業は普通の農業なんですよ」と述べていた。「普通の農業」と有機農業とを隔絶するのでなく、農耕のありようを見直し創造していこうというのが日本の有機農業の願いであり、推進法の精神なのだと思う。

 有機農業も普通の農業も地域自然と人々の助け合いのもとにあることに変わりはなく、水利や田んぼの維持、落ち葉利用など里山の管理と利用、景観の維持など、むらの「共同の技術」に支えられている。有機農業も地域生態系を形成する一員であり、有機農業はこれを豊かにしていく自覚的な営みだといえよう。

 だから有機農業は本来的に、地域づくり力を備えている。

 そして、有機農業のもう一つの大きな特質は農と食をつなぐという姿勢の強さであり、その象徴が日本有機農業研究会の「提携の思想」である。日本有機農業研究会の「提携の十カ条」の第一条は次のようだ。

「生産者と消費者の提携の本質は、物の売り買い関係ではなく、人と人との友好的付き合い関係である。すなわち両者は対等の立場で、互いに相手を理解し、相助け合う関係である。それは生産者、消費者としての生活の見直しに基づかねばならない」

 農と食をつなぐ、これも点から面への展開が求められる。直売所を軸に広がった地産地消、地域自給の魅力的展開に有機農業は大きな力を発揮する。

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農家や地域の元気に支えられてこそ実現

「有機農業100万ha」は第1世代の思いや技術蓄積を受け継ぎつつ、次の世代や多様な人々によって進められる。そのための新しい条件も生まれている。

 まずは田園回帰、関係人口の広がり。農に向かう若者は有機農業への志向が強い。これを力にしたい。

 農法の多様化の条件も広がっている。たとえば養蜂。これも新規就農の関心が高いが、養蜂には農薬の影響が少ない地域環境が望ましい。千葉県市原市の「市原みつばち牧場」では、遊休地などで花や木を育て、果樹農家とも連携しながら里山を養蜂で再生する動きが広がり注目を集めている(20年5月号)。家畜の放牧など、耕作放棄地や遊休地を有機農業で活かす工夫もいろいろありそうだ。

 そして大きな新しい条件は、国が「有機農業100万ha」を掲げたことだ。有機農業の拡大には「戦略」が重視する技術革新だけでは無理で、新しい担い手への技術伝承や売り先の確保などの地域的な取り組みが必要だ。これにむけ、国や自治体による抜本的な支援強化を実現する、そのための新たな条件が生まれた。

「有機農業100万ha」は、農家や地域の元気に支えられてこそ実現する。農家や地域が元気に、賑やかになることに「100万ha」の価値がある。次世代が安心して、希望をもって生きられる地域と地球のために、夢のある議論を地域から興したい。





田中武真
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