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言葉による支配構造~大本営発表とコロナ報道

支配構造[2]命題を絶対化する「言語」による支配
 2番目の、命題を絶対化する言語による支配とは、一体どんなものでしょうか。まず、命題を絶対化することで生まれる空気支配について見ていきましょう。

【命題の絶対化】
AはBである、という前提を絶対化して他の可能性を考えさせない
 現実の世界では、Aは条件次第でBになる場合もあれば、Cになる場合もある。成立の条件を明確化して、「実は検討していない」別の可能性を広く探るのです。
 逆に、人を誘導し拘束したい場合は、命題を絶対化して他の可能性を検討させません。そのために、AはCである場合や、他の可能性を考える者を弾圧して、徹底的に「AはBである」という、誘導のためにつくった勝手な前提だけを絶対視させるのです。
 ラベルに書いてあるのは文字、単なる名称です。ところが名称を絶対化する、名称を感情的に理解させると、成立条件を考えずに、貼り付けたラベルが「そのまま中身を示している」と考えてしまうのです。
 単なる空き瓶に「劇薬」と大きく書かれた紙を貼り、どくろのマークをイラストとして描けばどうなるか。歩道にそのビンがあれば、人はそれを避けて通るでしょう。場合によっては警察や役所に通報するかもしれません。
 名称(ラベル)やイラストなどの図像は、人間の思考を強力に拘束します。命題や名称による空気の支配を発揮させるのは簡単です。最初に、真っ赤な「ウソのラベル」を貼るのです。AはBである、という命題をつくり、本当はCやDである中身を隠すのです。
 大衆をだますために、中身とまったく違う名称のラベルを最初にビンに貼っておく。これで、大衆は中身がラベルとまったく違うとは、疑わなくなるのです。命題や名称をある種の前提として機能させて空気を生み出す典型的なウソ、詐術です。
日本人は「言葉に隠された前提」に気づけない
  意図的に設計された言葉には、「隠された前提」があり、言葉の成立条件を疑わないことは、相手の醸成したい空気(前提)に誘導され、操られることを意味するのです。言葉による空気の詐術は、言葉に隠された前提を利用して人を騙しているのです。
狂気の「大本営発表」で破綻した旧日本軍
 大本営発表のデタラメぶりは、実に想像を絶する。大本営発表によれば、日本軍は太平洋戦争で連合軍の戦艦を四十三隻沈め、空母を八十四隻沈めたという。だが実際のところ連合軍の喪失は、戦艦四隻、空母十一隻にすぎなかった。つまり、戦艦の戦果は十・七五倍に、空母の戦果は約七・六倍に、水増しされたのである(*4)。
 書籍『大本営発表』(辻田真佐憲・著)では、実際にサイパン島での戦闘に参加して重傷を負い、米軍の捕虜になった平櫛少佐の戦後回想の言葉も紹介しています。
『必勝の信念』『大御心を奉じ』『一億一心』『八紘一宇』『聖戦完遂』『断乎撃滅』『向うところ敵なく』『勝利はあと一歩』……何というむなしい言葉の羅列であろう。官僚の作文だけでは戦争はできない。こういう無内容・無感動の言葉を適当に操作していれば、知らぬまに勝利がころげこんでくる、とでも思ったのであろうか(*5)
 発表された言葉や数字は、現実と一致していなければすべて虚構(真っ赤なウソ)ですが、日本人は、「言葉=現実として絶対化する」、言霊信仰のような思考をしがちです。しかし一部の大衆は、戦局の悪化に気付いており、噂は全国に広がっていました。
「今日本は負戦さばかりだそうですね。発表ばかり勝つた様にしてゐるが、本統[ママ]は負けて居るとの事だ」(1942年12月28日、熊本県内の投書)(*6)
「サイパンに出撃した連合艦隊は全滅した」「『ラヂオ』を聞いてどうするか。軍報道部の『ニュース』は嘘ばかりだ」(*7)
 言葉=現実という感覚を持つ日本人は、言葉と現実を突き合わせる習慣が希薄です。
 しかし、言葉と食い違う現実は常にあり、思いや思考と現実も、本来まったく別の存在です。言葉の絶対化、感情移入の絶対化は、大本営発表を異常な魔法に仕立て上げ、現代でも日本人を口先だけで何度も騙すことができる状況をつくり上げているのです。
[1]「文化的感情」の臨在感的把握による支配
[2]命題を絶対化する「言語」による支配
 二つの空気は、人の心の中で結び付けられた、何らかの意味や感情を、拘束力に変換することで、空気として大衆を誘導し、視野を狭める効果を発揮します。
 日本人は、命題や言葉、心の中で結び付けられた意味と現実を同一視する、原始的な感覚を保持したまま、技術革新を成し遂げて近代化に成功した稀有な国です。
 このような国で、言葉と行動がまったく違っても、恬として恥じないウソつきがいれば、社会に大混乱を引き起こし、国家を未曽有の破滅に誘導できてしまうのです。


しおたろう
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