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飲食店を見殺しにする「非科学的な政府」と「無責任のメディア」の罪深さ

リンクより引用です。
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コロナ禍とBSE問題の意外な共通点

今回のコロナ禍で、思い出すことがあります。BSE、牛海綿状脳症、いわゆる狂牛病問題です。

メディアでは、連日、バタバタと倒れる牛を映し出しては、その恐ろしさを伝えていました。その姿がいまも記憶に焼き付いている人も多いのではないでしょうか。

日本では2001年に、アメリカでは2003年にBSEに感染した牛が発見されましたが、アメリカで発見された2003年12月23日、わたしは、アメリカ大使館の農務部に勤務しており、日米政府窓口として、この問題に対処しました。

発生が確認されてすぐの24日の朝の早朝5時に農林水産省へ報告に来てほしいと連絡がありました。ところが、そのすぐあとにまた電話がかかってきて、メディアが殺到しているので別の場所にしてほしいと。結局そこにもメディアが殺到しており、たいへんな騒ぎになっていました。

アメリカから牛肉が入ってこなくなる……と、流通産業、外食産業、食品加工産業など大混乱です。

それからの数年は、アメリカの牛肉の最大のユーザーであった吉野家の安部修仁社長(当時)や外食産業のリーダーの方々と、一日も早い輸入再開を目指し、立場を超えて意見交換する機会が増えました。

このBSEとコロナとが、なぜかぶって感じられるのか。それは、政府の非科学的な対策、とメディアの無責任な報道などのせいです。

税金のムダ遣いだったBSEの全頭検査

BSEというのは、牛の病気のひとつで、BSEプリオンと呼ばれる病原体に感染した牛の脳がスポンジ状になり、異常行動、運動失調などを示し、最後は死に至るというものです。

日本でこのBSEが発生したのは2001年9月のことでしたが、その際、日本政府は全頭検査を実施します。

全頭検査と聞くと、すべての牛の検査をすることで、安全が保障され、安心して牛を食べることができる、そうイメージするかもしれません。しかし、実際はまったく違います。

BSEは生後半年から1年ごろにBSEプリオンを含むエサを食べて感染するとされ、腸から脊髄を経て、脳にたどり着くまで3年程度かかります。そのため、30カ月齢以前の牛の脳を検査しても、プリオンを検出はできません。それなのに、若い牛も含めすべての牛を検査すれば「安心だろう」ということで検査をしていたのです。

無駄だということは、厚生労働省、農林水産省もわかっていたにもかかわらず、そこに何十億もの税金をかけたのです。

「安全」よりも「安心」が優先される現状

わたしは、このとき、日本の中で、「安全と安心」がまったく混同されてしまったのではないかと思っています。

メディアは、BSEに感染した人は1人も出なかったにもかかわらず、バタバタと倒れる牛の映像を繰り返し流すことで人々のパニックをあおりました。

そうしたマスメディアの報道によって過熱した国民の不安をやわらげ、「安心」させるために、政府は科学的には根拠がない全頭検査を行った。つまり、「安心」の確保のための施策をとったということです。

本来、「安全」だからこそ「安心」できるのに、「安全」よりも「安心」が優先される。BSE問題はその契機になったのではないかと思っています。

「全頭検査=安心」論がかき消した科学的真実

では、どうすればよかったか。狂牛病の原因であるBSEプリオンは牛の腸から入り脊髄を通り、脳にたまります。そのため、科学的根拠に基づいた対策としては、プリオンがたまるところ、つまり脊髄をはじめとするそれらの「特定部位」の除去を徹底すればいいのです。

しかし、その説明は「全頭検査=安心」論によってかき消されてしまいました。

そのため、その2年後にアメリカでBSEが発生した際も、日本はアメリカ側へ全頭検査をするよう申し入れました。ところが、アメリカは、無意味なことに税金を投入するはずもなく、全頭検査に同意をしませんでした。

その結果、輸入再開交渉はこじれ米国からの牛肉が3年半もの間、入ってこなかったのです。




時田 弘
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