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新型コロナウイルスは生物兵器になり得るのか?~致死率が低くても敵の戦力を低下させることは可能②

〇 生物兵器としてオペレーションは容易か?

 次に、新型コロナウイルスが生物兵器だと考えた場合の運用性、つまりオペレーションの容易さを考えてみたいと思います。

 兵器としての生物兵器の運用を考えた場合、問題は「投射能力」(兵器を攻撃対象にまで到達させる能力)です。核であれば弾道ミサイルなどが投射能力と呼ばれますし、戦略的な観点では空母の保有数・能力が投射能力と言われることもあります。

 生物兵器をテロ的に使用する場合、まずは攻撃対象に接近する必要性、ありていに言えば、ウイルスを携行して入国する必要性があります。ウイルスはX線検査にも金属探知機に引っかかることもないため、保安検査をくぐり抜けるのは容易です。つまり、警戒網を突破することは容易です。

 次は、パンデミックに至らせることができるかどうかが問題となります。

 新型コロナウイルスをテロ用生物兵器として考えた場合、発症前にも感染力を持つという特質は、とても効果的です。

 自著のネタバレになってしまいますが、生還を意図しなければ、テロ実行犯自身がウイルスに感染して入国し、発病前に攻撃対象国内をスプレッダーとして動き回ることで、感染を一気に広めることさえ可能です。

 ウイルスは、初期の感染部位で増殖したウイルスが、血液によって全身に広まる1次ウイルス血症という状態になります。この後、それぞれのウイルスにとって増殖しやすい部位(自然宿主細胞)でさらに増殖し、正常な細胞を破壊、ウイルスによっては毒物を放出するため、病気として発症します。

 従来のウイルス性肺炎を起こすコロナウイルス(SARSなど)の場合は、肺で増殖し呼吸を困難にします。狂犬病では中枢神経系で増殖し、精神錯乱などの神経症状を呈します。この自然宿主細胞において、ウイルスは活発に増殖するため、血中、さらにはリンパ液などにもウイルスが大量に放出される2次ウイルス血症の状態になります。多くのウイルスでは、この段階で体外にウイルスが大量排出され、感染力を持つということになります。

 インフルエンザの感染力が強いのは、病気の治りかけから治った後だと言われます。それは、初期の感染部位(粘膜)でのウイルス増殖では、体外に排出されるウイルスが多くないためです。新型コロナウイルスの場合、初期の感染段階ですでに体外への排出が多くなるのでしょう。すなわち、ウイルスが自然宿主細胞での大量増殖を始める前の初期感染部位での増殖と、一次ウイルス血症での段階で、ウイルスの体外放出が始まるのだろうと思われます。この点は今後の研究で明らかになるでしょう。

 新型コロナウイルスでの生物兵器テロを考えた場合、この点は非常に重要です。誰もが、スプレッダーとなってしまい、無警戒の場合は、容易にパンデミックを引き起こすことになるからです。

 感染拡大という観点で、もう1つ注目すべき点は、前述した新型コロナウイルスの致死率の低さです。

 生物兵器として使用される可能性が高く、極めて致死率の高いエボラウイルスは、最近でもアフリカでたびたび発生しています。WHOなどの努力もあって、世界的な流行となることなく封じ込めに成功していますが、エボラの感染は、医療技術が低かった過去においても発生していたと思われます。それでも感染が世界的に広がらなかったのは、感染力に比較してエボラの致死率が高かったからだという推測があります。つまり、感染力に比して致死率が高いウイルスは、宿主である感染者を死亡ないしは重篤な状態にしてしまうため、感染が広がらない結果になるためです。

 新型コロナウイルスの場合、「致死率が低く、感染者が2次ウイルス血症となって大量のウイルスを体外に放出させつつ、医療機関での受診を求めて動き回った」ことが、感染を広めたのだと思われます。






津田大照
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